テクニカル分析 概要
テクニカル分析は、株式や為替、商品などの金融市場において、過去の価格や出来高のデータをもとに将来の値動きを予測する手法です。
過去の価格や出来高の変動をグラフ化した「チャート」を分析し、将来の値動きを予測する手法で、市場参加者の心理や行動はパターン化されるという考え方に基づいています。
主に短期から中期的な投資判断に用いられます。
テクニカル分析の基本知識
テクニカル分析の基本知識を身につけることは、投資判断の精度を高めるうえで非常に重要です。
テクニカル分析には、主に「トレンド系」と「オシレーター系」の2つの分析手法があります。
1. トレンド系ツール
テクニカル分析におけるトレンド系ツールは、相場の全体的な方向性、つまりトレンドを把握するための指標です。これらのツールは、相場が上昇・下降・横ばいのいずれに向かっているかを判断するのに役立ちます。
主なトレンド系ツールは以下の通りです。
移動平均線 (Moving Average)
移動平均線は、一定期間の価格(主に終値)の平均値を線で結んだものです。期間が短いほど直近の価格に敏感に反応し、長いほどなだらかな動きになります。
- 見方:
- 移動平均線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンド。
- 期間の異なる複数の移動平均線が交差する「ゴールデンクロス」(短期線が長期線を下から上に抜ける)は買いサイン、「デッドクロス」(短期線が長期線を上から下に抜ける)は売りサインとされることが多いです。
一目均衡表 (Ichimoku Kinko Hyo)
一目均衡表は、日本で考案された分析手法で、5つの線と「雲」と呼ばれる帯で構成されます。相場の均衡が崩れることでトレンドが発生するという考えに基づいています。
- 見方:
- 価格が雲の上にある場合は上昇トレンド、下にある場合は下降トレンドと判断されます。雲は支持帯(サポートライン)や抵抗帯(レジスタンスライン)として機能します。
- 「三役好転」(転換線が基準線を上回る、遅行スパンが価格を上回る、価格が雲を上回る)は強い買いサインとされます。
ボリンジャーバンド (Bollinger Bands)
ボリンジャーバンドは、移動平均線を中心に、上下に統計学的な標準偏差から計算された2本の線(バンド)を表示します。これにより、価格が移動平均線からどのくらい離れているか、つまり相場の過熱感やトレンドの強さを判断できます。
- 見方:
- バンドの幅が狭まる「スクイーズ」はトレンドの発生を予兆し、バンドが急激に拡大する「エクスパンション」は強いトレンドが発生したことを示唆します。
- 価格がバンドに沿って動く「バンドウォーク」は、トレンドが継続している状態を示します。
2. オシレーター系ツール
オシレーター系ツールは、テクニカル分析において相場の過熱感を測る指標です。
「買われすぎ」や「売られすぎ」といった状態を判断し、相場が反転するタイミングを予測するのに役立ちます。
この分析手法は、特にトレンドがない横ばいの相場(レンジ相場)で効果を発揮するとされています。
なぜなら、オシレーターは一定の範囲内を上下に振れる特性を持つため、価格がレンジの天井や底に近づいた時に売買のサインとして機能するからです。
RSI (Relative Strength Index)
RSI(Relative Strength Index)は、「相対力指数」とも呼ばれるオシレーター系のテクニカル指標です。
一定期間の価格の上昇幅と下落幅を比較することで、相場が買われすぎか売られすぎかを判断し、相場の過熱感を測るために使われます。
RSIの値は0%から100%の間で推移します。
- 70%以上: 買われすぎの水準とされ、今後価格が下落に転じる可能性を示唆します。売りのサインとして判断されることが多いです。
- 30%以下: 売られすぎの水準とされ、今後価格が上昇に転じる可能性を示唆します。買いのサインとして判断されることが多いです。
この基準は一般的な目安であり、銘柄や相場の状況によって適切な数値は異なります。
MACD (Moving Average Convergence Divergence)
MACD(Moving Average Convergence Divergence)は、「移動平均収束拡散法」と訳されるテクニカル指標で、トレンド系とオシレーター系の両方の性質を併せ持っています。
主に、短期と長期の指数平滑移動平均線(EMA)の差から算出されるMACDラインと、そのMACDラインの移動平均であるシグナルラインの2つの線で構成されます。
ゴールデンクロス: MACDラインがシグナルラインを下から上へ突き抜けること。これは、短期的なトレンドが長期的なトレンドを上回り始めたことを示し、買いのサインとされます。
デッドクロス: MACDラインがシグナルラインを上から下へ突き抜けること。これは、短期的なトレンドが弱まり始めたことを示し、売りのサインとされます。
ストキャスティクス
ストキャスティクスは、オシレーター系のテクニカル指標で、一定期間の価格変動幅における現在の価格の位置から、相場の買われすぎや売られすぎを判断します。
RSIと似ていますが、ストキャスティクスは複数の線を用いて、より明確な売買サインを出すことができるのが特徴です。
ストキャスティクスは、通常2本の線で構成されます。
- %K: 直近の終値が、過去一定期間の高値と安値の変動幅のどの位置にあるかを示します。
- %D: %Kの単純移動平均です。
この2本の線の動きや水準から、相場の状況を判断します。
メリットとデメリット
テクニカル分析は万能の分析ツールではなく、メリットとデメリットがあります。
初心者にもわかりやすく整理してみました。
メリット
テクニカル分析の最大の利点は、視覚的で分かりやすいことで、チャートを見れば、一目でトレンドや過去の価格動向を把握できます。
また、企業の財務状況や経済指標といった専門知識がなくても分析できるため、初心者でも取り組みやすいです。
- 視覚的に分かりやすい: チャートを見るだけで、現在の相場状況や過去の動きを直感的に把握できます。
- 取引のタイミングが明確: どの指標を使って、どの水準になったら売買するかをあらかじめ決めることで、感情に左右されにくい取引ができます。
- 経済知識が不要: 企業の財務や経済指標といった複雑な情報を知らなくても分析が可能です。
デメリット
テクニカル分析は、あくまで過去のデータに基づいた予測であり、万能ではありません。
- 「ダマシ」がある: 予期せぬニュースや出来事によって、チャートが示すパターンが崩れることがあります。
- 主観が入りやすい: 同じチャートを見ても、分析者によって解釈が異なる場合があります。
- 過去のパターンが必ずしも繰り返されるわけではない: テクニカル分析は過去の傾向に基づく予測であり、未来を100%保証するものではありません。
まとめ
テクニカル分析は、過去の価格や出来高の変動をグラフ化した「チャート」を分析し、将来の値動きを予測する手法です。
企業の財務状況などを分析するファンダメンタルズ分析とは異なり、市場参加者の心理や行動はパターン化されるという考えに基づいています。
テクニカル分析は、単独で行うのではなく、ファンダメンタルズ分析と組み合わせることで、より精度の高い投資判断に繋がります。
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